NPO法人日本ジークレー協会は、2020年にスタートした「giclee2020プロジェクト」の活動を基盤に、同プロジェクトに携わったメンバーたちが中心になって旗揚げいたしました。
「ジークレー(giclee)」とは、デジタルプリンティングの一つの形態であり、インクジェットプリンターを介して広く一般に普及しつつあります。とりもなおさず、プリンティングとはすなわち原版をもとにした紙とインクによる大量頒布の技術で、グーテンベルク以来の文明の「利器」でもあります。
ただし、私たちの発想はジークレープリンティングを単なる大量頒布技術としてだけでは捉えておりません。むしろ、その逆の「一枚もの」の芸術的価値を創出し、それを保全する有効な手段だと考えています。方法論としては、従来のプリンティングにデジタル技術を加え、ファイン用紙や特殊インクを使い、それらの「調合」を作品作家が確認・承認した上で、肉筆を加えた唯一固有の芸術作品に仕立てることにあります。つまり、原画をもとにした複数のプリンティングは存在しながらも、それぞれの一枚のディテールは微妙に異なり、個々に「作家の意思」が宿った、似て非なる固有のプリンティングアートが実現することあります。またそこに、Web時代における新しい分野における芸術の価値創造を志しているのです。
ひるがえって、ジークレープリンティングの社会的認知と市場拡大は、江戸時代の錦絵を先例とすることができます。錦絵は、版元・絵師・彫り師・摺り師などの協業で成り立った芸術文化であり、北斎や広重、歌麿に代表される優れた作品は、江戸庶民に愛されたのみならず、海を渡って当時ヨーロッパの印象派画壇にも強い影響を与えました。
当協会は、まだ、発足して間もない組織ではありますが、ジークレープリントの価値創出を目指すBranding部門、アート作家を発掘し育てていくArt部門、ジークレープリンティング技術を向上させていくPrinting部門のそれぞれに、各専門のエキスパートが参画しています。
ぜひ、これからのジークレー文化とジークレー市場の健全なる形成をサポートしていきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
NPO法人日本ジークレー協会 理事長 堀越雅明